滝について〜豆知識、あれこれ |
滝の定義〜多くの人々の思いがこもる
滝とは、簡単に言えば「川の途中に、急に段差があって、水が勢い良く流れ落ちる場所」のことです。ただし、川以外にも滝が生じる(例えば潜流瀑〜せんりゅうばく〜等の)事例がありますので、それが全てというわけには行きませんが、大多数の滝は川の途中にかかるものといえます。 国土地理院の地図の表示ルールでは、5メートル以上の落差がある箇所に滝の記号が付されているそうです。しかし、これは地図を作る上での都合だと思います。5メートル以下でも、地元の人々が昔から「何々の滝」と名づけて親しんでいるものは、やはり滝なのだと思います。 日本人は、古来から滝が好きです。信仰の対象になったり、修行の場所として大切にされてきました。精神的な拠りどころになっていたのです。だから、こんな山奥にと思われるような場所にも、ちゃんと道が付けられて、誰でも通えるようになっています。 滝の名前で特に多いのが、「不動」の名の付く滝です。不動明王は水をつかさどる神様と言われています。空海(弘法大師)によって日本に伝えられた密教(真言宗)の根本尊である大日如来の化身とされています。密教の修行の場になることが多い滝にとって、ふさわしい神様といえるでしょう。 多いにつけ少ないにつけ、水は生活を営む上でとても重要なものです。安定した水の供給を願い、洪水や飢饉の苦しみからの救いを求めて、昔から人々は祈ってきました。そうした古来からの、多くの人々の思いが、それぞれの滝に込められているのです。 我々の日本は、こんな狭い国土でありながら、火山が多く、四季の変化に富み、台風が通過し、梅雨もあって年間降水量が多く、森林が育ちやすい環境であるために、全国各地に素晴らしい滝を見ることが出来ます。我々は、風光明媚なこの国に生まれて、本当に幸せであると思います。 |
滝の効用〜飛沫、マイナスイオン、森林浴、温泉の楽しみ
近年、飛沫浴の癒し効果がいろいろ言われるようになりました。滝の周辺には、落下して飛び散る飛沫によりマイナスに帯電した空気イオンがたちこめ、そのマイナスイオン化した微粒子を浴びると、ぜんそく、ストレス、不眠症などに有効で、水量が豊かで落差が大きい滝ほど、その効果が高いといわれています。 ちなみに都会、特にOA化した職場などにはプラスイオンが充満しており、イライラやアレルギー、ストレスが起こりやすいとの事です。 逆に、マイナスイオンは、緑深い森や渓谷などに多く、樹木の光合成などの働きによって多く発生し、特に滝の場合、大量の水が落下して分子群がぶつかり合うときにマイナスイオンが発生して、その作用が気分を爽快にするのだそうです。(以上、講談社「日本の滝」より) 科学的な根拠はともあれ、山の中に入り、森林に囲まれ、滝のそばで深呼吸をすると気持がすっきりと開放された気分になれるのは、間違いありません。 また、滝のあるところには、近くに良い温泉がある事が多いのです。良い空気を吸い、思う存分遊び、撮影し、温泉に浸かれば、誰でも皆、心身ともに癒されることでしょう。 私が、滝の撮影がやめられないのは、この心地良さのせいなのだろうと思っています。 |
滝の種類〜一般的には、滝の形から次のとおりに分類されています。
(例示写真および、下記の滝名をクリックすると、その滝の写真が大きく表示されます。)
<直瀑(ちょくばく)> 落ち口から滝壷に向かって一直線に流れ落ちる滝。最も滝らしく豪快なイメージがあるが、滝の幅や落差によって、印象はかなり違ってくる。虹が発生し易い。 札幌市の「アシリベツの滝」、島牧村の「賀老の滝」、日光の「華厳の滝」等がある。 |
<分岐瀑(ぶんきばく)> 流れ落ちる途中で、岩によって流身が幾筋にも分かれる滝。落ち口が一つで末広がりに流れ落ちるもの、落ち口ですでに二つや三つに分かれているものなど、様々なパターンがある。岩壁に沿って流れるので優しいイメージのものが多いが、直瀑に近い落ち方をするものもある。 奈井江町の「不老の滝」、日光の「霧降の滝」、福井県の「龍双ヶ滝」等がある。 |
<段瀑(だんばく)> 階段状になった岩の上を流れ落ちる滝。二、三段のものから八段、九段やそれ以上の多段のものなど段数は様々である。必ずしも一直線に各段を下りてくるとは限らず、右に折れ左に曲がって落ちる事もある。またそれぞれの段ごとに滝壷を形成している場合もある。 東川町の「羽衣の滝」、美瑛町白金温泉の「白金不動の滝」、茨城県の「袋田の滝」等がある。 |
<渓流瀑(けいりゅうばく)> 川床を滑るように落ちる滝。急傾斜の渓流といったイメージの滝である。 阿寒町の「阿寒川源流の滝」、日光の「竜頭の滝」や「湯滝」、群馬県の「吹割の滝」等がある。 |
<潜流瀑(せんりゅうばく)> 川の水が流れ落ちるのではなく、地層の中を走る伏流水が、崖の途中から突然流れ出して形成される滝。数が少なく、非常にめずらしい。 知床の「乙女の涙」、美瑛町白金温泉の「白ひげの滝」等がある。 |
<海岸瀑(かいがんばく)> 川が海岸線の断崖から海に落下するもの。 知床の「カムイワッカの滝」、南茅部町の「古部の滝」等がある。 |
以上は滝の外形からの分類ですが、この他に滝の成因による分類(地学的な分類)から見ると、断層瀑布・溶岩瀑布・堅岩瀑布・河蝕瀑布・潜流瀑布という分け方もあります。 また、滝の形からは「縦滝」と「横滝」の二つに大別することも出来ます。前者は「華厳の滝」のように落ち口が狭く、後者は「ナイアガラの滝」のように落ち口が横に広がっています。 ちなみに、世界三大瀑布といわれる「ナイアガラの滝」(アメリカ、カナダの国境)、「ヴィクトリアの滝」(アフリカ)、「イグアスの滝」(ブラジル、アルゼンチンの国境)は、全てスケールの大きな横滝であります。 世界最長の落差の滝は、ベネズエラにある「エンジェルの滝」(「アンヘルの滝」とも言います。発見者の名を取っています)で、落差1005メートルですが、こちらは縦滝です。水が下に到達するときには霧状に散ってしまうので、滝壷が無い事でも知られています。 なお、世界で一番幅広い滝は、ラオスの「コース滝」で幅10キロ、落差15〜20メートルだそうです。 ついでに、日本三名瀑とは、和歌山県の「那智の滝」、栃木県日光の「華厳の滝」、茨城県の「袋田の滝」です。 日本の名瀑の場合は、単なるスケールの大きさよりも、周囲の自然を含めた、品格の高さや趣きの良さのほうが評価されているようです。 また、落差の日本一は、富山県立山の「称名滝」で落差は350メートルです。本道の「羽衣の滝」は第二位で落差は270メートルです。 横滝の日本一は、鹿児島県の「曽木の滝」で、幅210メートル、落差12メートルです。. きりが無いので、この辺で。 |
私の撮影方法〜思いつくままに書いてみました。
滝や渓流の撮影方法については、大雑把に言って次のように分けることができます。 ◎止める場合と流す場合 水の写真では、動きの美しさと色の美しさが重要なポイントになると思います。 水の動きを止める〜シャッター速度を250分の1秒以上の速い速度に設定します。 500分の1ならまず大丈夫です。 水のしぶきを止めると、飛び散る動きの面白さや迫力が出せます。 シャワーを浴びるときの爽快感を連想させる写真にもなります。 肉眼を超えた感覚の写真になります。(人間の視覚は125分の1秒相当です) 流す〜美しく流すなら4分の1秒以下の遅い速度にします。(広角28ミリレンズのとき) 滑らかで美しい流れの表情の写真になります。 水面などの反射や反映を活かし、周囲の色や季節感も取り込み易くなります。 その他 中間の速度では、クローズアップで澄んだ水の透明感が撮れます。 (透明感を出すときは、偏光フィルターで水面の反射をコントロールします。) 輝く光跡も水面を引き立ててくれます。 ブレを利用して動きを出すときには、8分の1秒とか15分の1秒程度の速度に することもあります。 被写体までの距離や使用レンズの焦点距離によって、多少の違いがあります。 ◎全体を撮るか、部分(切り取り)か 周囲を歩き回って、良い場所をいろいろ探します。 周囲の色々な場所、角度(左右)、アングル(上下)から狙ってみます。 少し離れて、周囲の自然を含めて全体を撮ります。(標準、広角等) 近寄って、あるいは遠くから形の良い部分を切り取ります。(広角、望遠、マクロ等) 一ヶ所からの撮影で、満足しないようにします。 絞りやピント位置も、いろいろ変えて撮っておきます。 風景写真は、手前から遠くまでピントが合っているのが基本とされていますが、 表現意図によって、手前をボカしたり、遠くをボカしたり、絞りやピントで作画します。 ◎周囲の環境、花、鳥などを入れて内容を豊かにする。ただし主役(狙い)ははっきりさせます。 周囲の草木、花などは良い脇役になります。 岩壁は、レンズを少し絞り込んで克明に描写すると、迫力が出ます。 水に濡れた岩壁の輝きを活かすと、強い印象の写真になります。 虹は、スローシャッターの方が厚くはっきりと、美しく撮れます。 (偏光フィルターを使って、写り方をファインダーで確認しながら撮影します。) ◎光の射す方向や、露出の変化を活かす 斜光〜色彩が鮮やかに出て、立体感もあり、虹も画面に入れやすい。 逆光〜新緑や紅葉を透過光で鮮やかに浮かび上がらせます。 スポット光〜主役を浮き上がらせる効果があります。余計な物が目立たなくなります。 太陽を画面に入れる〜インパクトが強く、余計な物を暗部で隠すこともできます。 思い切った極端な露出で実験的に撮って、結果を楽しむのも面白いと思います。 自分が見せたい部分が適正露出であれば、他の部分を気にしない場合もあります。 時間の経過で光の射す方向が変わると、被写体の印象も大きく変わります。 また、空の色の変化も、水の色に影響を与えます。 出来れば、翌日違う時間帯に行って見ると、また違う表情に出会えます。 (遠方の場合には、夕方に到着して日没まで撮り、現地で一泊して、 翌日の夜明けから昼まで、様子を見ながら撮ることも、よくあります。) ◎気象について 雲が無く快晴〜色彩は鮮やかに出るが、強い影ができ、水の色も飛び、良くない。 雲のある晴天かうす曇〜良い条件。明るく、強すぎず、すがすがしい写真になる。 曇天〜被写体が落ち着いた雰囲気で捉えられ、穏やかな撮影状況になる。 雨天〜防水対策をしっかりすれば、情感のある写真が可能になる。 ◎段階露光の重要性について シャッターチャンスを完全に生かし、後で後悔しないために、段階露光をしておきます。 予定外の面白い写真が撮れることもあり、露出の効果にも敏感になります。 ◎その他、準備するもの 三脚〜スローシャッターを使うことが多いので必需品です。また、レリーズも必要です。 円偏光フィルター〜水面や岩壁などの光の反射をコントロールします。 特に虹の撮影には欠かせません。 ストロボ〜暗い被写体を浮き上がらせます。延長コードがあればなお便利です。 携帯用のレフ板も同じように使います。 軍手(ゴム引きの物が良い)、長靴かフェルト底の靴、長袖シャツ、防寒・防水対策品、 タオル、虫除け、虫刺されの薬、熊対策のラジオ・鈴・笛、帽子かヘルメット、ロープ等。 |
滝の楽しみ方・マナー〜ゴミ問題、立ち入り禁止になった滝の話。
熊との遭遇、自然に対してまだまだ無知な我々。